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生産性変化率とは? 生産性向上だけでは経営改善できません!

物価高騰、急激な円安、賃金上昇等、会社経営にかかる費用は上がる一方。
このような難しい経営環境が続く中で、あなたはどのような意思決定をしていますか?

この窮地を、生産性向上だけで乗り切ろうとしていませんか?

ある金属加工の話

ある金属加工屋があります。地方によくある中小企業です。
多品種少量の注文に対し、激しい競争に毎日しのぎを削っていました。

その中、主材料である鉄やステンレスが値上がりしていました。それだけでなく、電気代、運賃等の諸経費も上がる一方です。

さらに、最低賃金の見直し等、賃金も上げていかなければなりません。
毎期毎期赤字スレスレで、このままでは赤字転落の危機が迫っていました。

社長は、設備投資や作業改善での生産性向上でなんとかこの状況を打開しようとしていました。
このような場面をよく目にします。果たして、この方針で経営改善ができるのでしょうか?

生産形態

生産と一口に言っても、その形態や品物の流し方はさまざまです。ここで整理したいと思います。

【生産形態】

生産形態は、「注文の時期」「品種と量」「モノの流し方」の3つの観点で整理できます。
原則的には、受注生産は個別生産、見込生産は連続生産となりますが、現実的な工場では、さまざまなバリエーションがみられます。

生産性変化率

このような複数の生産形態がある中で、単純に生産性向上だけで収益を改善しようとしても成果につながりません。
なぜならば、「生産性変化率」というものがあるからです。

生産性変化率とは、生産改善の活動がどれだけ生産性向上につながり利益改善に変化を与えるか?ということです。
多量生産であれば、設備投資や作業改善によって大幅に生産性を高めることができます。

この場合、「生産性変化率」が大きいと言えます。
生産性変化率の大きな業態であれば、これによって増大する資金・経費を吸収して、利益改善できるかもしれません。

しかし、上記の金属加工屋のような多品種少量生産の場合、設備投資や作業改善による効果は、多量生産と比較するとはるかに小さくなります。

つまり、「生産性変化率」が小さい業態なのです。だから、経費、賃金などの上昇を生産性改善で吸収することはできないのです。

値上げの必要性

それでは、どうしたらいいのでしょうか?

値上げをする以外に方法はありません。
しかし、現実を見ると、これが後回しになっています。

それどころか、苦しくなって、仕事欲しさにさらに値下げしている会社も見受けられます。
生産性変化率が小さい業者同士で、値下げ競争をしている場合ではないのです。
これでは共倒れになります。

生産性変化の格差は、どうにもなりません。
そして、インフレの時、ましてや現在のような悪いインフレ(コストプッシュインフレ)の時、
また今後賃金を上げていくかぎり、生産性変化率の小さな業態では値上げをするかつぶれるか、業態を変えるか、いずれかの道を取る以外に方法はないのです。

特に、今の外部環境(コストプッシュインフレ、円安等)においては、多量生産の業態であっても、売価を上げずに生産性だけで吸収するのは難しくなっているのが実情です。

利益感度分析

自社の生産性変化率はどうなのか?
今度は、生産形態からではなく、ビジネス構造からも見てみたいと思います。
それを測るための方法として、利益感度分析というものがあります。

自社のビジネス構造が以下に近いような場合は、生産性変化率が小さくなります。

利益感度分析の詳しい記事は、こちらをご覧ください。

関連記事:非常識な黒字化の方法

【会計は図形で考える】

上図のビジネス構造の場合、利益感度分析の結果、感度が高い順に並べると、
①P(価格)、②V(変動費)、③Q(販売数量)、④F(固定費)となることがわかります。

さらに、現在は物価高騰、賃金上昇の局面です。
このままではVQとFは上昇し続けて、V感度はもっと敏感になり、Q感度とF感度は鈍感化し、
さらにQとFの差はなくなっていきます(赤字スレスレ)。

そもそも生産性変化率とは、設備投資やFを掛けて、生産性を向上させて、Qを増やす戦略です。
Fをかけた以上にMQを増やすということです。

Q感度とF感度が鈍感化していく中、そこに集中しても、利益改善は到底望めないのです。
一番敏感なPの見直し、値上げは避けては通れません。

ぜひ自社の数字を図形に当てはめて、分析してみてください。

まとめ

  • 自社の生産性変化率は大きいのか?小さいのか?を知る
  • 生産性変化の格差は、どうにもならない
  • 生産性変化率の小さな業態では値上げをするかつぶれるか、業態を変えるか、いずれかの道を取る以外に方法はない

国際紛争、世界経済、技術革新、人口減少、消費者変化、流通革命・・・企業をとりまく環境は目まぐるしく変わっています。

そして、それらの変化が直接的、間接的に、緩急混ざって自社に影響を及ぼします。
もしもその変化に対して対応を見誤ったら、たちまち窮地に陥ります。

その変化を見極めて、戦略を決め、迅速に意思決定するのは、経営者です。
上記の金属加工屋も、現在は値上げ&販売戦略に取り組んでおります。
あなたも、ぜひ外に目を向けて、その変化を見極めてください。

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